第3日 6月13日(火) 総距離58.0km 晴れ

時刻 行程 歩行距離 累計距離
07:20 三笠屋旅館を出発 -- --
08:00 藤井寺(11番ふじいでら)に到着 2.0km --
10:05 長戸庵に到着 -- --
11:25 柳水庵に到着(12:00まで休憩) -- --
12:35 一杉庵に到着 -- --
15:20 焼山寺(12番しょうさんじ)に到着 12.9km 14.9km
16:30 なべいわ荘に到着 3.4km 18.3km

宿のおじさん・おばさんは親切で話し好き、朝ご飯をいただきながらお遍路にまつわる話を聞く。朝出発する時にはペットボトルのお茶、飴をお接待していただき、元気に送り出してくださった。ありがとうございました。
まずは藤井寺に向かうと、途中、集団登校する小学生達とすれ違う。お遍路は学校・会社・家庭などの日常生活を離れて巡礼するから、格好良く言えば非日常的存在。一時的にせよ働きもせずブラブラする訳だから、非生産的存在とも言えるな・・・等とくだらないことを考えつつ、宿から40分ほどで藤井寺に到着。


十一番札所藤井寺の山門


こちらは本堂


いつも通りにお勤めを済ませると、次はいよいよ本日のメインイベント 焼山寺の遍路転がしに挑戦だ。四国八十八カ所でも最難所と言われる山越えに備えて飲み物を補給したいが、自販機が見つからない。このまま進むべきか迷ったが、まあ途中で調達できるだろうとタカをくくり、お茶が半分ほど残った500mlペットボトルを持って歩き始める。後で分かったのですが、これがとんでもない判断ミスでした。ちなみに藤井寺の駐車場には自動販売機があるそうです、皆さんは飲み物の補給をお忘れなく。
さて快晴の中、急な登り道を進むと、汗が滝のように・・・。ちなみに焼山寺までは、長戸庵、柳水庵、一杉庵の順で休憩ポイントがあり、距離の目安にもなります。最初のポイント長戸庵は藤井寺から約3km。到着したものの、ここにも自販機や水道はない。


藤井寺から十二番焼山寺に向かう道に入った所




長戸庵を抜けてからもアップダウンが続き、次第に水不足の不安が募る。汗は止めどなく流れるが、お茶や水はとうの昔に底をついており、心なしか寒気がする。このままでは脱水症状の可能性も・・・。柳水庵の先に、車道と遍路道が交差する所があるので、ここまでタクシーに水を運んでもらおうか・・・等と真剣に考えたりした。ここまで来ると、戻ってもかなり距離があるし。とはいえ、あれこれ考えても仕方ないので、気を取り直して前進、前進。
しばらく頑張ると柳水庵が見えてくる。なんと、きれいな水がこんこんと湧き出ている。どうやら飲めそうだ、助かった! ひたすら湧き水を飲む。続いて、頭や手に水をかけて体を冷やす。地獄で仏とはこのことか?大げさでなく生き返った気がしました。水がないというのは怖いですね。


柳水庵の入り口、まさに命の水でした


こちらが柳水庵


この柳水庵は焼山寺までの中間点。ペットボトルに水を補給すれば山を越えられそうだ。少し余裕が出て敷地を散策すると、女性の歩き遍路さんが2人で休憩されている。後でわかったのだが、京都府宇治市の60才の方と、愛知県名古屋市の60才プラスの方で、それぞれ別々に歩いておられる。43才でこんなにヘロヘロな自分が恥ずかしい限りだ。お二人から飴や草餅をいただき、ありがたく頂戴する。疲れた時の甘い物は格別でした。すでに昼食も済んだお二人の出発を見送り、私も昼食かたがた木陰で休憩する。
自然と静寂を十分味わい、さあ出発。「水不足も解消したし出発しますか」、一人だとつい独り言が多くなる。いきなりの登り道にもめげず前進。30分ほど歩くと、急傾斜の先に、巨大な杉の木とこれまた巨大なお大師様の像が姿を現す。一杉庵だ。ここでも軽く休憩し、脚を休める。


一杉庵の巨大な大師像と杉


一杉庵の周囲は山、また山


一杉庵から左右内谷川までは一気の下り。のぼり道が大の苦手、くだり道大好き人間の私は、半分走って駆け下りる。川の近くは風が涼しい。これで山を二つ越えたから難所も終わっただろうと、楽観的になったのも束の間、今日一番傾斜の激しい登り道が控えていた。「あんなに下った後でこの激しい上りは殺生です、お大師様」と、またも凡人の泣き言が・・・。山の頂上を橋で繋げば良いのに等と、愚にも付かないことを呟きつつ歩き続ける。できるだけ先を見ずに足元を見て登る。まだまだ登りが続く現実から目をそむける私・・・。
幸いこの急傾斜はせいぜい1km、なんとか焼山寺手前の集石所に到着する、あと1kmだ!時間に余裕があるので、ここでゆっくり休んで最後の登りに備える。と、さきほど追い抜いた女性の一人、宇治のお遍路さんが追いついてこられた。休憩しながら少し話す。定年され、思い立って徳島の区切り打ちに挑戦したそうだ。荷物が重くて一部家に送り返したが、それでもまだ重いので宅急便で荷物を次の宿に送り、最小限の物だけを担いでこられた。30分程休んで、一緒に出発する。最後の1kmは意外と緩い登りで、それほど苦労せずに山門に到着した。宇治のお遍路さんは涙ぐんでおられた。体力の限界に近かったんでしょうね。私も感動しました。


折角登ったのに、いったん谷に降りる。この後の登りがキツイだけに・・・。


”ようやく”、十二番札所 焼山寺の山門に到着!!


山中の境内には巨大な杉の木が並び、静寂が周囲を覆っている。周りは山また山のみ。道のりがしんどかったせいか、厳粛な雰囲気を感じる。お参りを済ませてから、一時間以上、境内の雰囲気を楽しんだ。納経帳の字体も丸くて力強い独特のものだ。柳水庵、一杉庵、この先にある杖杉庵の分もまとめて記帳していただく。水不足で不安だったが、ここまで来られて良かった。


焼山寺の本堂、右手は工事中


境内の巨木群。車や建物と比べると改めて大きさを実感。


さて、ここから今日の宿、なべいわ荘までは4km弱。宿が同じということで、また宇治のお遍路さんと一緒に出発すると、ちょうど名古屋のお遍路さんも焼山寺に到着。お二人とも還暦を過ぎての遍路ころがし完走、おめでとうございます。焼山寺から杖杉庵までは一気の下り。ペースが違うので宇治のお遍路さんに失礼して、駆け下りる。杖杉庵では、四国遍路の元祖といわれる衛門三郎とお大師様の像を見つつ少し休憩する。


杖杉庵の衛門三郎とお大師様の像


今日の宿 なべいわ荘近くの橋から川を見下ろした所


さらに下り道を進み、途中、清流にかかった橋を渡ると”なべいわ荘”が見えてくる。
チェックインしてすぐにお風呂に入る。お風呂は檜製でゆったりサイズ、建物もきれいで非常に良い宿だ。風呂上がりに洗濯を済ませると写経にいそしむ。夕食では、さきほどの宇治・名古屋のお遍路さん、また和歌山と福島の男性のお遍路さんと一緒になった。皆さん歩き遍路さんで、和歌山の方は65歳、これが4回目で逆打ちをされている。熊野道も歩かれており、お遍路の経験談など良い話を聞かせていただいた。周囲に電灯がないので、夜には真っ暗闇に包まれる。空には満天の星、川には蛍の光に、降るような蛙の声、美しい日本の自然を満喫。久しぶりに天の川が見えました。
振り返ると、お遍路の山道は人生そのものだった気がします。先の見えない行程、登りのコーナーにくると、また登りでがっかりしたり、下りでほっと一息ついたり。一喜一憂しても仕方なく、一歩一歩前進するしかない。ずっと登りが続くと下を見て現実逃避したり・・。たくさんの石仏に見守られつつ、昔ながらの遍路道を歩いた一日でした、オヤスミナサイ。